日曜日、近所の文具店にてセーラーのペンクリニックが開催されました。
雨の中、てくてく歩いて行ってきましたよ。
店内では、かれこれ昨年の秋くらいから(嬉しそうに)でっかく掲示されていた、このイベントの告知。
年に一度、今回で2回目なのです。
田舎なのに有り難いなあ。
昨年の様子はこちら。
今回も川口さんが担当です。わーい。
絶対みて頂きたかったのは、昨年、ボストンのプルデンシャルセンターのLevengerで購入したウォーターマンのカレン。
購入前の試し書き当初から多少の書き難さは感じていましたが。
とにかくこの日本未発売の軸をずっと前から欲しかったというのもあって、どうしても日本に連れて帰りたかったのです。
Mニブでペンポイントが巨大。
このせいで書き出しでつるつる滑るような、インクが出るポイントが私の手には合致しないような、微妙な歯痒さがあって。
書き出しの滑り感は、使い込んでいけば間もなく自力で解消できる(むしろその後しっくり手に馴染む次元がやってくる)場合が多いので楽しみにしていたのですが、このペンの場合はちょっと事情が違ったようで、ほとんど改善しなかったのです。
書いている途中でも筆勢によっては時々掠れたりもしましたし。
ちなみに、levengerはオリジナルインクを出しているので知っている人は知っているかも。 ビンのかたちがフラスコみたいにかわいくて、インクの色も鮮やかです。12色もあるんですね。 店頭では、オレンジっぽい色のを万年筆の試し書き用に使わせてくれた記憶が。
というわけで。
こんなに美しいペンなのに、特に今年に入ってからはほとんど休眠状態になっていたのでした。
もったいない。
最終日の午後3時過ぎでしたが、椅子に座った先客さんが。
私が座るとすぐに次のお客さんも隣の席に。
つまりなんと「満席」。素晴らしいことなんですよこの店のペンクリとしては…。
間もなく、休憩からいそいそと戻られた川口さんの顔が「おっ。(いっぱいキテルー!)」と輝いたのを私は見逃しませんでした(笑)。
で、先客さんは年配の女性でしたが、廃版になった細身のモンブランを持ち込んでいました。
長年使っていて書き味は問題ないけれど、インク漏れがあるみたいでなんとか直したい、と切々と訴えてましたので。
(川口さんが試しに紙に滑らせてみると、傍目で見ていても表情のある線がスルスルと出て来て書きやすそうなペン先です!)
しかし、ルーペで見ると首軸が一部割れちゃっているらしく。
まあこれはモンブランでの修理しかないだろうというわけで(おそらく今回のアシスタント的な役割で一緒に来ている)スタッフさんが替わって、テキパキと修理送りのための伝票書きなどの作業を店員さんに指示したり。
で、私の番。
前述のスタッフさんに、「待ち」の間、あらかじめ症状を告げてありましたので。
川口さん、この件が書いてあるカルテのようなメモをちょっと眺めてからルーペでじーっと観察。
(カートリッジをつけたまま持っていったので)その後ススーと試し書き。
「ほう、こりゃ、最初のインク、出ないでしょ~。」
「は、はいそうなんです。」
(…首振り人形のようにカクカクと頷く私は既にド緊張。)
その後は、目にも留まらぬ速さで!ラッピングペーパー(フィルムやすり)の上でぐりぐりぐり…と擦っていきました。
ルーペでまたちょっと眺めて、さらに違う角度でぐりぐりぐり….
そして、ツツーっと書いてみて、仕上げみたいな感じですりすりすり….とまた違った感じに摩擦。
最後に、手のひらにちょっと乗せた状態にして、紙の上で、(ペンの自重だけで)普通に線が出るのを確かめてから
「ハイ、出来たよ、書いてみて。」
この間、1分かかった?という感じです。
正直、オドロキと緊張で(笑)手がワナワナしちゃって、字なんて書けませんでしたけれど、紙への最初の接地でインクが出る!のはこのペンの歴史上初めてなので、ああ治ったんだなあ~!と。
すごい嬉しかったです。
「これ、旅行先で、軸が気に入って買ったんですヨ」 「ウォーターマンだし日本でもちゃんとケアしてくれるからこれからも大事にしてあげてね~」 「はいっ。」 (またもやカクカク頷いて席を立つ私。) …. ちなみに、私の次の方は、私の親世代くらいの方。 ご主人の「具合が悪い万年筆」をそのまま持たされてきたそうで 「これ、どこのメーカーかも高いか安いかもわかりませんけどインク出ませんので直してください…」 「はいはい見せて下さいね~」 という会話がきこえました。 ちらりと眺めると、堂々たる太軸の緑縞のペリカンでした…。 なんか、こういうやりとりって地方のペンクリニックって感じでいいなあと思う私。
(あらためて家に帰って書いてみて気付きましたが)描線と同時に、ススーっという僅かなシャリ感的手応えが。
ミクロサイズの凹凸をつけてくれたような?
そう、この、ペン先端に上質の絹布でもついたような超僅かな摩擦感が、川口さんにみていただいたペンに共通する書き心地なんです。
私はこのクリーミーな触感(笑)が大好きで。
とにかくこれで、巨大なペンポイントでも紙の上で滑りすぎることがなくなりました。
この、軸とペン先ががっちりと一体にくっついているカレンほどペン先が硬い万年筆はそうそう無いと思うんですが、それでも信じられないくらい柔らかな紙アタリになったんですよ。
書いていて、この硬さと重さが面白い。
このまま使い続ければ、もっと馴染んでいく筈!
まるで新しい万年筆を入手したかのように私の物欲もスッキリと満たされてしまい、そのまま上機嫌で帰宅。
いろんな人が素晴らしいとレビューしている、オリジナルモデルの「マイカルタ」等触らせていただいたのに、手ぶらで帰ってスイマセン…
でもホント、いいもの手に入っちゃった。という新鮮な嬉しい感覚で使ってます。
ウォーターマンのカレンは、筆圧強くて万年筆は自分に合わない、とか思っているような人にもオススメな、ずっしり頑丈なペンですよ。
流線型でモダンなデザインがとっても綺麗なので見飽きません…。