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インク工房で作ってもらいました。

土曜日、午後から都内で仕事があるというので、うきうきとついていったのでした。
もちろん、東京駅隣接の大丸デパートにてペンクリニック+インク工房が開催されるというので、私だけ、そちら方面をうろうろする目的で。

7階の文具売り場は今まで何度か立ち寄ったことがありますが、万年筆売り場をじーっと眺めたのは今回が初めて、かもです。
柱を囲んだ島状のこじんまりしたコーナーながら、比較的密度濃く、品揃えが豊富なことに驚きました。
モンブラン、146サイズのボルドー(現在廃番)なんかもあってアラいいなあと。

さらにその向こうの奥の方で、今回は川口氏でなく長原幸夫氏による調整が行われていました。
4.5人が順番待ちで座っており、比較的盛況だったように思います。
(先日のウチの近所で開催のときよりははるかに活気が..)
今回は、石丸氏によるインク工房目当てだった私は、遠巻きに眺めて、熱心にそのときのお客さんと話し込まれつつ調合しているのを確認ののち、一応、時間をつぶすつもりで、売り場のほうで気になるものの試し書きなどをいくつか。
(パイロット・カスタムの、いろんな種類のペン先が試し書きできるセットなどもショーケース上に置いてあって面白かったのです。
久々、学生時代以降ぶりに手にとったかもしれない。懐かしい~。
当時と同じものでもいいから、1本欲しいなあ。)

すっかり楽しんでしまったので、インク工房の待ち客がいなくなったのに気付いた私はいそいそと係の人(?)にご挨拶して、今お相手中の方の横に座らせて頂きました。
その人は、赤茶系の色を作ってもらっていました。
こまごまと希望を述べながらブレンダーの石丸氏へ熱心にリクエストし、何度も浸けペンで出したインクの色を眺めながら楽しそう。
モンブランのボルドー(インクではなく、軸色)がちょっと茶色みを増したような、しかし明るめの筆跡になるなんともかっこいいレンガ色に仕上がり、私も横から眺めていて欲しくなったほどですよ..

そのお客さんは、「灼」「焼」などとメモ用紙にご自分で書かれていて、それもまた字に合った良い色!出来上がったインクを瓶に詰めた石丸氏に、名前をなんて付けましょうかと訊かれていたのですが。
「焼きそばの「焼」でお願いします」
とその人が答えたのです。
私はその瞬間から、これ、ソースの色だ…思ってしまったのはヒミツだ。
でも、ボルドー系のインクマニアな方なら絶対欲しいと思うであろう、素晴らしい色でした。

さて、私の番です。
私のリクエストは、
「濃いけど明るくかがやく、赤や緑の色味が極力入っていない、青」
というもの。
コレを狙って、(ペリカンの)ターコイスとブルーを混ぜてみたものの、素人ではやはり思ったような色が出なくて..等々の失敗談を告白してしまう私。
「あーそれはそれで良い色なんだけどね!」
とにこやかにフォローしてくださるのですが。
そんな感じですごく朗らかにやりとりが進むので、すっかり緊張が解けてたのしかったのです。

市販されているセーラーの青が比較的落ち着いた暗めの色なので、青についてはリクエストも多いだろうと思ったとおり、石丸氏があらかじめブレンドしてある数タイプのものがあるので試して欲しいとのことでした。
赤(紫)・緑っぽさを極力消したものとして作ったものを書かせてもらうと、なかなか素晴らしい!

「あーこれは良い色ですね!…」「でしょう?」と返しつつ、私の僅かな「…」を感じ取ってすかさず「強いていえばどこが不満に思います?」と問いかけてくるところが、プロだ..と内心驚いたんですが。
もう少し明るければベスト。と思っていたわけなので、それを伝えると、さらに別なインクを出して、青の明るさについてはこれが限界値(これ以上明るくするとただ薄めるだけとおなじになっちゃうとのこと)で作ってみたから絶対気に入るんじゃないかな、と。

わーわー!これこそ、「濃いけど明るい」青ですよ。
表現しがたいですが、超高級サファイヤ・ブルーといいましょうか。
迷わずOK、であります。
「よかったー、気に入ってくれて。」
と石丸氏が瓶に詰めるのを眺めつつも、なおもこの色に浸けたペンでぐりぐりと用紙に書かせてもらっていた私。

その、インクお試し用のペン、こういうものがあるとコミミにははさんでいましたが、筆文字が書けるという万年筆、ふでDEまんねんだったのでした..。
筆文字用途というよりはこの、入り抜きがくっきりとつけられる面白い極太線がかけるので「絵道具」としてすごーく欲しくなった私。
でも、裏返して使うと、見たこともないくらいの極細線が書けるんですよ。
「すごくかきやすいのですが!このペンは今日販売されてますか?」
とつい尋ねてしまい。

すると、石丸氏はちらりと、ななめ後ろで盛況なペンクリニックの客列を眺めたのち、
「あ、じゃあ、今、あっちが忙しいみたいだからすぐに対応できそうもないし、ウチの長原がトクベツ調整済みのそのペン先と付け替えてあげるから、それでいいですか?」
とサプライズなことを!

というわけで、新品(1000円です)のパッケージをばりっと剥がして、今まで私がいじくりまわしていたペンの先をスポッと引き抜いてペン先を取り替えてくださったのでした。
「ね、これがナガハラがつくった方で、これが売り物のほう。違うでしょ?」
と較べて見せてくれたのですがほんとに、先の曲がり角度がはっきりと違うのです。

ペンクリニックは今回該当者なしで不参加な私ながら、贅沢なおみやげを(ちゃんとペンのお金は払いましたよ..)つけてもらった気分。

「どうぞお楽しみ下さい」の言葉に見送られ、もう、ほんとに気分よくその場をあとにできたのでした。
ちなみに、私は今回はインクの名前はそのまま、石丸氏のブレンド用に管理的につけたという4桁のコード番号をただ、シンプルに書き込んでもらいました。
(自分の名前をまぜたりしたメルヘンチックな命名も考えついたりもしたのですが、ダメだ、恥ずかしすぎる..。) 今回のカルテ(のようなもの)は今後もずっと保存されるとのことなので、また同じものを作っていただいたりもできるみたい。

帰宅後早速、プロフェッショナルギアの長刀ペンのほうに。
フローがいくらか市販の、純正ジェントルインク時代よりも増えたような気もしますが、書き味はほとんど以前の青と変わらず。
この純正な感覚が欲しかったので大満足なのです。
ぜひとも、2瓶目へリピートするくらい使い込みたいと思ってます。

そして、特製「ふでDEまんねん」(このネーミングはどうかと思うけど…)のほうは、ワケあって(いずれ後述)セーラーのコンバーターはもともとうちにいくつもあるのですがそれをとりつけて、ラミーの黒を充填。
(黒インクは最近めっきり出番がないものの瓶で購入してたっぷり残っていたので、これはよい使い道になりそうです。)
うーむ、これで1000円てたのしすぎです。
ちなみに一応、筆ペンらしさを試したくて書いてみた字は「塊魂」!

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