久し振りに「おおこれは使ってみたいな」と思われるインクが出るとのことで、わくわくと発売日を待っていました。

プラチナから出た6色のインクなのですが、これはいわゆる「古典インク」と言われるものです。
万年筆ユーザの間では、ブルーブラック色ではおなじみのもの。
現在のところ、大手メーカーではプラチナやペリカンのブルーブラックがこのタイプです。
(数年前まではモンブランやラミーもこれだったのですが、いつの間にか染料インクに変わってしまいました。)
古典インクと定義される性質については、以下、インクの箱に印刷された説明書きを引用します。
『茶葉等に含まれる植物以来の成分と鉄分を調合した水溶性インクです。
紙に浸透し酸化して定着するため耐光・耐水に優れ、長期間の保存に適した特殊なインクです。
その特性上、書き始めは鮮やかなインクが書き終える頃には黒く酸化していきます
色が変化する過程もお楽しみください。』
国内外において、本来こういうのがペンのインクとして普通だったので「古典インク」と呼ばれているのでしょうが、今はペンにもトラブルが少ない普通の染料インクが主流です。
私も、なにかと面倒なので古典は使わなくなって久しいかも。
10年前にモンブランの”古典ブルーブラック”で書き込んだ箱のラベルがあるのですが、今はこんな感じ。

室内の明るい場所に置いているので本来のブルーブラック色の要素はすっかり消えてしまいました。
まさに鉄サビのような茶褐色が濃いめに残り、紙にしっかりと定着しています。
(次の10年も特に変わらずこのままじゃないかな?)
この、いわゆる「古典インク」に関してはふだんSNSで交流しているなかに大変に詳しい方がいらっしゃいます。
今回のプラチナのインクでも、実際に協力されたとのこと。
○万年筆用の古典ブルーブラックインクについて、文献を調査し、自分の手で実験してきた記録から、主なものまとめ – 趣味と物欲
この方のブログで、ブルーブラック以外の色でも存在することや、この性質ゆえの(軸内へのこびりつき等)手入れ法など、多くの知識を得ることが出来ました。
ビタミンC(アスコルビン酸)を溶かした液がクリーナーとして使えるとのこと、驚きです。
twitter上でいつも、多くの人が書き込む古典インクへの疑問や心配へ丁寧にレスをつけてらっしゃるので、非常に勉強になるのです。
今回購入したのは、フォレストブラックとラベンダーブラックの2個です。
ひとつ60ccも入っているので、全色コンプリートというのは(今のところは!)自信がなくて。
古典という性質と関係無しで、最も自分が「使いそうな、好きな色」で選択しました。

いや〜良い色です。
ペン先のインクフローによってグリーンの明るさが全く違う印象を受けました。
当初は中細程度で普通のインク出のペンに入れてみたのですが、なんというか「湯通ししたワカメ」みたいな明るい植物グリーン。
これはこれで魅力的だったのですが。
それならばと、手持ちの中では豊潤にインクが出るとっておきのペン(カスタム74透明軸中字)で試してみたところ、黒みをともなう濃淡が実に綺麗で、決して枯れすぎていない温かみのあるみどり色。
インクフローも、純正のパイロット製を入れていた頃よりはぐっとシマったくっきりとした描線となり、良いことづくめです。
目にも手にも心地よい、まさに古典インクという景色になったのでこちらに決定しました。

↑ masahiro万年筆で調整品を購入。2008年だったのか〜
近年の自分の中で「極細ペン先ブーム」が来ていたのでなんとなく休眠させていたのですが。
仕舞い込んでいたのが申し訳ない、大変に書き心地の良いすべすべモチモチしたインクフローのペン先なのです。
今後はしっかりと使い込んでいきます。
こんな綺麗な色なのに、古典インクらしさはしっかりと有り、裏抜けがほぼ無いことが有り難いです。
(全然無いとは言えないのですが、moleskineですら使用に足るレベルでイケます)
色変わりは、今回の全6色のなかでは変化少なめなほうかもしれません。
上の写真は、コレクトの情報カードに書いてひと晩経ったものですが、いくらか彩度低めに落ち着いたもののそんなに変わってない感じ。
逆に、手持ちの中で、すぐ黒っぽくなるなーと感じたのは、moleskine、ミードの情報カード、フランクリン・プランナーのリフィルなど。
ウォーターマンのブルーブラックなど色変わりしやすい他のインクと同じく、これは紙質(pHなど)によるところも多いのだと思います。
みどり色のインクは、今までもいくつか買いましたけれど(モンブランのレーシンググリーンや、エーデルシュタインのアベンチュリンなど)この、黒すぎず明るすぎずの色加減がとても気に入りました。
やがて更に渋く変わっていくことを考えると、”みどりっぽい黒インク”として、非常に実用的に消費していけそうです。
もてあますことなく、ちゃんと使い切れるかも!という希望が。
あおみどりや青灰系の罫線を使ったノートや手帳と相性がよいですよ。
クリーム地にモスグリーンな罫線の能率手帳ゴールドなんてもうピッタリなので是非お試しを。
インク出の良い中字以上というのがスタンダードなおすすめペン先ではありますが、細字でも楽しく使えそうな個性があります。
というわけでもう長くなっちゃったので、ラベンダーブラックの感想は次回記事にて書きます。
発売したてなので下記ページ内でも現在品薄かもしれませんが、いずれ在庫も戻ると予想します。
当初通販サイトで「プラチナ古典インク」で検索していて全く引っかからなかったので店舗限定なのか?田舎では手に入らない?とがっくりきていたのですが、そもそもの正式名称が違うのでした。
(今回私はAmazonで購入しました。)
