
実は何年もずーっと、いつかはここのペンを買おう…と思い続けていました。
それでもなんとなく「まだまだそのうちね。」とあとまわしにし続けていたのを、とうとう決断!
中屋万年筆の、赤溜・細字です。
先日銀座の伊東屋に行ったのは能率手帳買いも目的の1つだったですが、中屋のイベントが開催されていて、普段売場に置いてあるよりも、ずっと多くの種類の実物がみれる絶好の機会であるから というのも大きいです。
ネット上でいきなり通販する前に、決めきれないことがいくつかありまして、実際にいろいろと眺めたり手にとったり出来る機会がどうしても欲しかったのです。
しかも、職人さんの常駐日かつ平日だし。
(という理由で、雨の中頑張って出掛けたのだ。
しかしその状況なら、対面調整後にそのままお買い上げに至ってしまう危険性もじゅうぶん覚悟。
メルシーポイントやら貯金箱etc..総ざらえでひっくりかえして握りしめて行けば、当然こうなるよなあ!)
赤溜め塗り軸にしようというのは、中屋のHPをはじめて見たときから揺らがずに決めていました。
この濃淡の深い漆の色が好きだったし、使ううちに表面の透明感が加わって更に奥行きが出てくる、という話をきいてとても憧れていました。
売場でたくさんの軸色をみてうっとりしたものの、ここは初志貫徹で。
軸のデザインもいろいろありまして、一応昔から、実際に買うならオーソドックスな「ライターモデル」になるかなと思っていたのですけれど。
長さが”ロング”と”ポータブル”と二種類あるのです。
これがネットに出ているデータでは(数字に弱すぎる私にとっては)イメージしづらくてどちらかに決断できず、ここの万年筆を買う最後の一押しに足りなかった最大の原因です。
結論から言って、私の手にはポータブルでじゅうぶん、というかたいへんに書きやすい。
とにかくこれがちゃんと見て持って較べられたのは良かった。
ライターモデルはキャップ無しで使うのが基本のようなので、通販だったら”なんとなく”ロングのほうにしていた確率が大きかったです。
(実物は、思わず2度見しちゃうくらい長くてすごい迫力。びっくりだ。)

応対して下さった吉田さんも、
「ポータブルっていっても149より長いくらいなんで、違う呼び方のほうがいいかなと思うんだけど…」
とのことで。
(ポータブルは、キャップとじた全長状態でも、ペン先からの軸だけの状態でも、149よりほんのちょい長め。
ざっくり言うと、太さは146と149の中間くらい。 握った感覚はペリカンのM800と近い感じ。
ライターモデルは、普段からこのあたりのサイズに慣れている人向けとも言えます。)
今年に入ってからレギュラーに加わったという、「ネオ・スタンダード」という軸デザインがありまして。
これと対抗馬になるプロポーションの、上述「ライターモデル・ポータブル」を持ち較べてさんざん迷うことが出来たのも、現場(?)に行った甲斐、ありました。
上記リンクの比較画像でみるとおり、ネオ・スタンダードのほうは、上下端がスっとたいらになっており、全体的に流線型。
デスクペンのデザインがベースになっているのだとか。
ネジみぞ地帯も狭めだし、首軸のくびれもシュッとしていて、ライターモデルとの違いは一目瞭然。
正直言って「お洒落!」と感じたのはこっちですし、女性や若い人にも抵抗なく持てる感じがしました。
今後、売れ筋モデルのひとつになっていくんだろうなあ..と。
それでも最終的にライターモデルを選択した理由は、握って、実際書いてみたときの安定感が決め手になりました。
(以下、あくまでも、私の手や持ち方に合わせた結果の感想であることご了承ください)
・全体的にふっくらしたボリュームのせいで指の中の収まりがよい。ほどよくフィットするというか。
”149キャップ無し”の持ち心地に近い。
・ネオ・スタンダードの首軸はけっこう急斜面な先細りなので、指が滑っていってしまいがち。
(私は書き量に従って筆圧が高まる傾向なので。)
・キャップをはずすと結構存在感のある、首軸上で広めの「ネジ溝地帯」が、指先のあたる絶好の範囲に巻かれているのがライターモデル。
ちょうどこの溝の上でぴったりと指を留めてくれるので、他の場所へ滑ったりズレたりすることなく、まったく余計な力が要らない。
キャップ無し状態でのバランスも非常に良くて、(かなり大きいペン先かつ軽めの軸なので)ポータブルだと私の手には物足りないかと心配していたのが、全くの取り越し苦労でした。
漆塗りの手触りは、ぬめっと柔らかで、それまで持っているどんな材質の手触りとも違う、イキモノ的な温もりがありますね。
いかにも、なにかに当たるだけで簡単に傷が付いてしまいそうなデリケートな感じもするのですが、意外と丈夫なんだそうで。
これから、新品時より更に硬くなっていくし普通に扱っていれば大丈夫ですよと言われましたが、もちろん革のペン皿常駐で他のペンとの間隔に気をつけて見守る日々になるでしょう。
何より、この溜塗りの色味がどう変わっていくのか楽しみだな~!
きちんと使って(触れて)いないと綺麗に変わらないというし、革に通じる”育て甲斐”を感じます。
中屋のHPをみていると、個別オーダーって楽しいだろうな!と溜息が出るほどの美術品寄りな特注品も多くあって。
自分だったら(なおかつ予算がたっぷりあったら。)という妄想がもくもくと涌いてしまうので、ほんと、新作ニュースの更新が楽しみで、みていて飽きないのです。
よく読むブログの数々でも、素敵なオーダー例の画像をいくつも見せて頂いていたので、凝り出すとキリがないだろうなあというのはよ~くわかっています。
伊東屋に展示されていたのは主に無地の塗りでしたが、それでもたくさんの色味があって目を奪われました。
まるで美術工芸品のよう..!
十角軸などは塗りの、面と縁の色差が素敵で、かなり欲しいと思いました。
また、ラミー2000のシリーズを思わせるような黒いつや消し軸も、落ち着いた和風っぽくて格好いいのなんの。(触り心地も良かった!)
私も通販で買うつもりだったときは、ちょこっとだけ、ペン先のメッキ色を変えたり・首軸に象嵌のしるしを入れたり..な、少額単位のオプション注文は当初予定していました。
しかしペン先色については、基本の金色がモンブランに使われているのとかなり近い「黄色すぎない、淡めな」イエローを帯びていたので、べつにいいや~とあっさり納得。
(赤い軸+ピンクゴールドにすると可愛い感じになるだろうなと思ったけれど、)こっちも金ペン先としては好きな雰囲気なのでこれで全然OK。
それに、一応その時点で誰も調整や購入待ちの人がいなかったことも手伝って、いろいろとお話ししたり試筆したりして時間を過ごすうちにフッと煩悩が去ってしまい。
結局、その場で組み立て調達可能のいちばんベーシックな仕様でお買い上げしてしまいましたが、”最初の”中屋としては大満足。
このぶんだと”次”がある予感はタップリ。
中屋の1本を買うことで、私の万年筆買いは限りなく”最後”になると思ってたけど甘かった…また「あたらしい沼」に足先を浸けてしまった思いです。
というわけでもう、相変わらず巻きもののように長々書いてしまったので(これから注文するどなたかの助けになればいいなと願いつつ。)
ペン先系の話は次回に記事を分けます。
やれやれ..。 今年ぐらいは、「大物は買わない」と固く誓っていたのに。